レンタカーと徒歩で断崖絶壁へ in ノルウェー

10月25日(木)、午後9時頃にオスロに着いた。安い航空券に飛びついたせいで、オスロ・サンネフヨル空港という、無理矢理「オスロ」をくっつけただけの小さな地方空港に着いて茫然。

オスロからアイスランド行きのチケットもすでに手配済みであり、今更のようにそちらの空港を確認すると、サンネフヨルから電車で2時間強かかる本物のオスロ空港から出るということが発覚。

このとき気づいていなかったら僕らは5日後の出国便に間に合わなかったかもしれない。サンネフヨル空港でカーレンタルし、そこに返すつもりだったから。

航空券を手配したのは僕だったから、2人分の電車代がかかることになり、しこたま文句言われるかと思ったが、妻は「気づいてよかったね」とほほ笑んだだけだった。や、優しい。

 

 

ほっとして出国と到着が入り混じったような少ない待合席に座って、レンタカーの予約時間までの数十分を待った。

しばらくすると、トイレに行った妻が、青ざめて戻ってきた。

「やばいよやばいよ。そこの売店のペットボトルの水、500円もする。。。」 

コリン星のやつ500mlと間違えよるわ、と思ってドヤドヤといった具合に行ってみると、確かにそこではとんでもない殿様商売が行われていて、立ちすくむしかなかった。

死ぬわけにはいかないので晩飯に水とクッキーくらいは買おうということになり、店内をぶらつく。さっきのは見間違えじゃなかったかと思い、もう一度値札表示を見返すが、どれを見ても殿様だった。

「(やっべーな。)」

「(やばいね。)」

他の客が、ホットドッグとかコーヒーとか何食わぬ顔して買っていく中、小声で話しながら僕らは貧乏からくる寂しさを味わった。

茫然に茫然を重ねたあとは海外初レンタカー。幸いにもネット予約の際に「トヨタのオートマか同等の車種」というのを選択していたのだが、右側通行・左ハンドルは変えられない。頭が真っ白のままHertzレンタカーへ。

 

 

受付に着くと、鬼ノルウェーのイメージが少し変わった。若いイケメンお兄さんが実に穏やかなスマイルで迎えてくれた。

日本の国際免許証を見慣れないらしく、僕の未熟な英語力も手伝い、個人番号を見つけるのに苦労させてしまった。また、保険のことを丁寧に説明してくれるのだけど、ここでも僕の英語力の乏しさが引っかかり、苦労をかけてしまった。

それでもイケメン兄さんはため息をついたり嫌な顔をしたりせず、「google音声翻訳」使って日本語に直してくれたりした。

最後に「英語が下手でごめん」というようなことを言って、謝ったのだけど、彼の返した一言が忘れられない。

「僕だって日本語を話すことはできないんです。気にしないでください。」

こんなことを英語圏で言われるならまだ分かるけど、英語圏でない国の人に言われたのだ。

 

 

車に詳しくないので分からないけど、用意されたのは本当にトヨタと同等なのかと思うほど高そうなベンツのオートマだった。

イケメン兄さんが優しく車の使い方を教えてくれた。カーナビも日本語に変えようとしてくれたり(結局日本語未対応だった)、そのうち胸の中から涙が飛びだすんじゃないか、と思うほど親切で、前回のポーランドのスーパーでの出来事を思い出しては、曇り空の寒い土地の今日があるのは、このような人たちの温もりによって保たれているのではないかと、真剣に思った。

 

 

感激したまま2人で空港を出ると、すぐに座席の中にヒーターが入っているようで接している体の部分が温かくなってきた。

マイクロチップが車内に埋められていて、高速料金は後日カード引き落とし、とイケメン兄さんからは聞いていたが、ゲートも何もなく、いつの間にか高速道路に進入していた。便利な国である。

とりあえずは周りの車に合わせて走ってみたが、どの車も時速110キロを目安に走っているようで驚きながら走った。

合わせる必要はなかったな、と今では思う。道に不慣れな僕らがそのスピードを維持すると、ナビの言う「右に曲がれ」という知らせなどが無意味なほどノーチャンスになってしまうから。

何度かチャンスを逃し、遠回りをしながらも、目的としていた大よその場所へ辿り着いた。道路の隅に車を停めれそうなスペースを見つけたところで停車。本当に山の中だったから車内の明かりを消すと月明りしかなかった。

疲れていた僕らはクッキーを食べて、水を飲んだら、歯も磨かず、風呂にも入らず、座席をめいっぱい倒し、アイスランドやアフリカで使うはずだった寝袋にくるまった。

 

 

目を覚ますと、反対車線の向こう側には湖が広がっていた。写真を撮るならもっと良いところがあるはずだと思い、車を走らせると、なんだかんだで停まるわけにもいかず、次の場所へ移動。

しかし、面白いことに美しい景色は次々に現れた。ノルウェーといえばフィヨルドで有名だけど、それだけじゃないことも情報としてあったことはあった。だが、その期待を超えていた。残念なことに運転していたためにあまり撮影していないが、自分の目には今もしっかり焼き付いている。

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地図には名も無い湖。どこの湖も水はどこも透き通っていた。この車の加速は素晴らしかった。

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2日目の夕方。目的のリーセフィヨルドを目前にして、お花を摘みにやってきた。画像左が僕らの車。

 

 

そして、lysebotnというフィヨルドの一番奥にある村へ降りるクネクネ道の途中で車中泊することに。

自炊のあと、今夜も風呂に入らないのはさすがにまずいと思い、股間だけでもと思い、近くにあった滝までヘッドライトを灯して歩いた。怖がりな妻はそれすらできず、別の方法でキレイキレイしたようだ。

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村へ続くクネクネ道に広い駐車スペースがあり、便利なことにイスと机があった。シーズンオフとあって独り占め。タイやポーランドから持ち込んだものを妻が調理している。ガス缶は大きな湖の畔にあったアウトドアショップにて購入。

 

 

翌朝、この旅、最大の事件が起こった。

ドローン撮影を何よりの目的としている僕にとって、このクネクネ道とフィヨルドを一緒に撮影することこそがノルウェーでの第一の目的地だったのだが、GPSや方位磁針の機能が安定しないままに飛ばしてしまっていたために、機体はクルクル回り始め操縦するのが難しくなり、どんどん風に流され、しまいには岩陰に隠れてスマホの映像がフリーズしてしまった。

日本での試行運転の際は、山の向こうに飛ばして同じことが起こっても、機体は勝手に危機を察知して自分で戻ってきて、本当に可愛いやつだと思ったのだけど、やつは戻ってこなかった。なんでこんなにツイていないのだろう。やっと飛ばせたのに。

そして、このときやっと思い出した。自分がダラダラしてばかりいたけど、あまり見たことのない絶景を少しでもブレのない動画で多くの人に楽しんでもらおうと思っていたことを。出せるだけの金を出して買ったドローンだったことを。

今いるこのクネクネ道もノルウェーという航空券の値段次第では来れるかもわからない場所。それでも旅立つ前から撮影場所として選んでいたことを。

だから今はハッキリと答えられる。

「なんで旅するの?」

こういう質問に。

「人を感動させるためです!!」と。

だけど、もうドローンは手元になかった。

 

 

ドローンを諦め、気持ちを切り替えようと車にエンジンをかけた。

クネクネ道を降りてlysebotn村へ到着。鏡張りの海と立派な崖と雲一つない青空にとり囲まれた。透き通った綺麗な水には何故か浅瀬にすら小魚1匹見つけられず不思議だった。

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lysebotn

 

あわよくば、ここから、次なる目的地へ行くために車ごとフェリーに載せたかったが、オフィスは無人であり、時刻表を見ても便数がかなり少なかったことから、ドライブを続行。

静かなドライブが始まると妻が言う。

「あんた、また新しいドローン買いなよ。死んでるって顔が。」

嬉しい一言だったが、このノルウェーでドローンを買うのは恐ろしい金額になることが予想でき、元気を取り戻すことはできなかった。

次のアイスランドでは絶対に飛ばしたいが、とあるサイトの「物価の高い国ランキング」という記事にアイスランドが4位にランクインされているのを記憶していた。ノルウェーはというとスイスに次ぐ堂々の2位。どちらで買っても旅資金が大幅になくなっていく。

「次買うなら支持率の高いドローンにしたいんだ。。。」

「そうしなよ。」

「え?日本で買っても12、3万するんだよ。」

「おお、すげー。。。でも、、、買いなよ。顔が死んでるから」

「でも、やばくない?」

「どうにかこうにか頑張れるでしょう。ここまでの金遣いが悪いわけじゃないから、どっかで抑えればいいんだよ。」

倹約家の妻がそこまで僕を慰めてくれるとは思ってなかった。あとで聞くと、本当に僕はヤバかったらしいのだけど。

ノルウェーやアイスランドのドローンがあまりにも高いようなら、もうアイスランドのあとで買ってもいい。

妻の慰めにより僕の思考は少しずつ動き始めた。そう、僕の言葉で表現すると、あれは「思考の凍結」だった。

ノルウェイの青空も少しずつ僕のそれを溶かしてくれた。

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本当に何でもない場所が素晴らしく度々車を停めた。

 

 

次なる目的地はプレイケストーレン(preikestolen)という真四角に切り立つ岩。登り口に到着したのは夕方だったが、明日に備えての駐車スペースや登山口を確認するためのシミュレーションだった。

夜は少し離れたところに誰も来なそうな森を見つけておいたので、そこに戻るつもりで駐車場の出口へ向かった。

出口のゲートには来るときには見つけられなかった精算機があった。ちくしょう、と思いながらクレジットカードを挿入。10分くらいしかいなかったのに2000円ばかり払った。

 

 

夜、森の中でキレイな星空を見た。オーロラとか見えないかな、などと思って自炊していると、まさかのガスカートリッジが空っぽになった。昨晩、風よけを作らずに調理したため相当な無駄遣いをしていたらしい。

前に買ったガスは湖のほとりにある小さなアウトドアショップであり、それはもう釣具屋に等しかった。2缶あるうちの1缶を買ったので戻っても売り切れているかもしれないし、それ以前の問題として距離があまりにも遠かった。

一番近い街に出てアウトドアショップを探した。しかし見つからないどころか、色んな店が閉店の準備にかかっている。

最悪の場合はガソリンスタンドへ行ってみよう、と秘策を残しておいた。アイスランドをキャンピングカーで旅した友人がガソリンスタンドで買ったと言っていたからだ。同じヴァイキングの歴史の残る国同士だし、通貨も同じ表記のkr。考えることは似ているはず。

ガソリンスタンドへ着くと、僕は車を停めるために妻を先に降ろした。

遅れをとって店内へ入ると、妻がニコニコ笑っていた。ガスを探していることを伝えたらしく、店員のオバちゃんが感じよく接客してくれていた。ガスも見つかった。

店を出ると、妻はノルウェーの人の優しさはこれまで優しかった他の国の人とは何か違う、というようなことを言う。

確かにそうかもしれないと思った。

 

 

翌朝、9時30分頃、僕らは予定通りプレイケストーレン登山口へ到着。駐車して、10分と経たずして、駐車スペースは埋め尽くされていった。

アイゼンなしで登るにはギリギリの時期だったと思う。登る途中で僕らは何度か氷を踏んで転んだ。周りの人たちが転ぶのも何度も見た。

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プレイケストーレンまであと少しの場所。この辺りでドローン禁止のプレートが見られた。

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日陰で見つけた大きな氷柱。

 

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プレイケストーレンに到着。皆ここで順番待ちして後ろの人に撮ってもらうのを繰り返していた。入り江の奥は悪夢のlysebotn

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ちょっと危険なことをして、妻を残してたどり着いた場所。ここまでくるとドローンのことはすっかり忘れていた。

 

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車を戻すためにサンネフヨル空港にできるだけ近づく。車でプレイケストーレンに行くためには船に乗ることも必要。行きも帰りもほとんどgooglemapの経路検索に頼った。

 

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最後はハイウェイと思われる道路沿いのガソリンスタンドの脇に車を停めて寝た。その際に併設のセブンイレブンで購入した物の値段。バナナ200g、水1.5l、コーヒー1カップ、サンドイッチ2個、マフィン1個。合計233クローネ≒2950円。

 

サンネフヨル空港に到着し、車を返した。残念ながら、イケメン兄さんには会えなかったが、受付には3人の兄さんたちがいた。簡単なやりとりで終わったが、彼らも「バイバーイ」と言ってくれて良い印象が残っている。なんだろう、ノルウェーの商売人はお客さんに対してバイバーイを使っていた気がする。

電車へ乗るため、空港内にある券売機で切符を買う。駅へ向かうバスが来るところへ行くと、時刻表があった。1時間に1、2本ほどと少なかった。

まったく見当違いの時間にバスが来た。電車を逃すわけにはいかず少し焦った。少し強面のバスの運転手だったが、尋ねてみると、表情をコロっと変えて教えてくれた。

どうもそこに表示されていたのは電車の時刻表だったらしい。

「寒いから20分くらい空港の中で待ってから戻るといいよ。」

言われた通りに僕らはビルに戻った。コーヒーを飲んで過ごしていると、運転手もビルの中で何事かやっていたらしく、思いもよらぬ方向から、そろそろ行くぞ、と声をかけに来てくれた。

降りるとき、降り口が運転手から離れたところにあったため、礼を言いそこねたので、わざわざ外側から周って運転席を覗くと、非常に喜んでいる顔を見せてくれた。

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50円玉に似ている硬貨。電車の中にて。車掌さんもゴキゲンな人で酒でも飲んでるのかと思うほどずっと笑っていた。

 

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本物のオスロ空港。その名はオスロ・ルフトハン空港。画像真ん中のバックパッカーが妻。下の階には日本食店もあったが、僕たちには手の出せない値段だった。

 

空港泊して午前中のアイスランド行に備えた。晩飯はピザ一切れ、バナナ、水。そのあとは手すりのないソファを見つけて寝転がった。

「ノルウェーって嫌な思いをたった1度もしなかったよね?」

と妻は言う。言われてみると、これまでの国には疲れ果てた顔をしている人などがいたが、この国にはいなかった。

 

 

翌朝、アイスランドへ向けて荷物検査を済ませ、出発ゲートへ。目的は1つ、カメラ屋を探し、ドローンを見つけること。

バンコクの空港にドローンが売っていたことを思い出して、ノルウェーでホビーショップなんかを探す時間をとるくらいなら、空港内の店に賭けるという判断だった。

 

探しに探した挙句、パソコンやカメラが並べられた店を見つけた。店の奥の方でMAVICPROという僕の狙っていたドローンが光っていた。値札を見ると免税だからか日本で値段を知ったときよりも安い。。。

即買いしようと思ったが、パッケージの裏面を見ると、ヨーロッパ仕様を感じさせるフシがあったため、冷静になって店員の若い男性に日本語の説明書がついてくるのか尋ねてみた。

すると、彼はメーカーのサイトと戦ったり電話したりして20分くらい僕に時間を費やした。いずれにしても僕は買うつもりだった。以前のドローンも日本語に対応していなかったけど、そこそこ扱い方を覚えられたし、このスタッフが懸命だったことに感動して。

結局、説明書は日本語訳がないけど、コントローラーとなるスマホは普段使っている言語表示になることが判明。

会計の際、彼にサンキューベリーマッチ以上の言葉で伝えたくて、言葉に詰まった。忙しいであろう彼に咄嗟にでた言葉は、胸に手を当てて「I’m glad to see you」だった。

英語としてそれがどうなのか分からないけど、それまで真剣にパソコンに向き合っていた彼の表情が急に緩んだ。

「楽しんでね。バーイー!」 

これがノルウェーのラストシーンとなった。

 

記事の最後に何よりこれが妻の深い優しさを知ったノルウェーの旅でもあったことを書いておきたい。ドローンを買い直され、僕の手配ミスにより支払うことになった電車代がワルシャワからオスロまでの航空券代と変わりないにも関わらず、旅中はシャワーも浴びれなかったにも関わらず、最初から最後まで彼女は楽しんでくれていたから。

 

 

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