バングラディシュの優男と顎ヒゲを生やした美少女 in リスボン

ナザレから首都のリスボンへ。

リスボンで年越ししたらマドリードへ移り、そこからタンザニアへ飛ぶ経路に決定。

安い便を探していたら、1週間ほどリスボンに滞在することになったのだけど、一般的な日本人がヨーロッパ滞在可能な3カ月という期間を目一杯使う形になっていた。あっという間に旅に出て4カ月経とうとしていたのだ。

ということは残り4ケ月しか時間はない。

そう思って妻に話すと、

「あと2か月だよ。これ以上、親に迷惑を掛けられないから。」という返事。

仕方ないことだった。しかし、残り2カ月で中々行けないアフリカ、中南米、中央アジア、ニュージーランドなどに行けるだろうか。そのあたりのことはアフリカでじっくり考えることになった。

手配したアパートへ向かう途中、猫がフェンスの上で鳴いていた。

 

アパートはぐっと費用を抑えるため、貸し切りではなく1つのキッチン・バスルームをシェアするタイプの宿を選んだ。

僕らの部屋以外に2つの部屋があり、すでにフランス語の女性が1つは占拠しており、もう1つにはパキスタンとバングラディシュの男性が2人で転がり込んでいた。

彼ら3人は学生としてここで暮らしていた。彼らの部屋は僕らのよりも質素だった。宿主が僕らの部屋だけを旅行者向けにAirbnbで貸し出しているように想像できた。

要するに彼らにとって僕らなんて「人の入れ変わりの激しい部屋」の住人にすぎなかったはずだ。

 

しかし彼らは違った。とくにバングラディシュのアザールという男が僕らにすごく興味を持ってくれたのは嬉しいことだった。

新入りとしての挨拶を済ませ、部屋に戻ったときのこと。息をつく間もなく部屋のドアがノックされた。

開けると、そこにアザールが立っていた。

「ねえねえ、アメリカのテレビ番組の司会者にコナンって人がいてさ、その人が名探偵コナンの作者の出身地(鳥取)を訪問したんだけど、その動画見たことある?え?ないの?じゃあ、めっちゃ笑えるから一緒に見ようよ。」

とてもフレンドリーな性格。日本に興味を持っていることもあり、色んなことを話すうちに僕らは打ち解けた。

あるときは、お茶を飲みに行ったりし、色んな話をした。将来のこと、オススメのヨーロッパの国、車、和牛、ムスリム、マリファナ、セックス。思い出すだけで笑えてくる。

 

宿主も気さくで親切な方だった。僕らも大きな街でエアビー利用するのは初めてだったけど、街のことを理解するために予め大きな地図を部屋に用意してくれていたりと、気配りが利いていた。

リスボンにはLIMEというアプリ登録さえすれば誰でも街中で使える電動キックボードがあるのだけど、宿主はその充電スタッフでもあった。

アパートの中に常に数台のキックボードが置かれていて、疑問ではあったのだけど、何台も持ち込んできたことがあったので、「大丈夫なの?」と尋ねたら、笑いながら教えてくれたのだった。

 

僕らもLIMEを何度か利用した。レンタル自転車などと違って、どこに乗り捨てても良いのが面白いところだった。

地下鉄の出入口に置かれたバイク。その背後には落書き。気が付かなかったけどポルトガルにもあったのだな。

 

以下、散歩して巡った市内の写真。

リスボンといえば路面電車

 

リスボンといえばペイントアート

 

屋根のないエスカレーター

 

黄色が映えるコメルシオ広場。コメルシオとは貿易の意。

オールドタウンを一望

 

ハンドメイドのタイル屋

 

なんでもない建物が可愛らしいリスボン

 

年越しはコメルシオ広場にて花火で新年を祝うイベントに行くことに。

途中で見つけたイワシの缶詰ショップ

 

コメルシオ広場で花火を待つも、仮設トイレが少なすぎて、、、

 

日本の友人へはがき、親へLINEで新年のあいさつを送った。

 

マドリードへ向かう日の未明。

僕らの借りた部屋。

 

外は暗く、霧が出ていた

 

ルームメイトへ「ありがとう」のチョコレート。上からベンガル語、ウルドゥー語、フランス語。

 

Uberという配車アプリを試しに使うときがきた。

妻がアプリを開くと、

「やべ、あと2分で到着って出てる!」

と言い出したので、慌てて重たいバックパックを背負う。昨晩のうちにルームメイト達に挨拶しておいて良かった。

 

部屋の照明を消してアパートの共有の階段を降りると、重たい荷物のせいで嫌でもミシミシと音が立ってしまった。

マンション内には口うるさい人が住んでいることを宿主から聞かされていたこともあり、まずいなと思った瞬間だった。

ちょうど上階の方でコツコツと人が歩くような物音が聞こえた。どんどん近くなるので、逃げようと思ったとき、激しくドアが開く音がした。

「ヘーイ!」

と聞き覚えのある声で誰かが僕らを呼び止めた。見上げると、階段の手すりと手すりの間から寝ているはずのアザールが僕らを見下ろしていた。

「バイバーイ!」と彼。

僕らも大きな声で「バイバーイ!」と返した。

 

ダンディなオジサンの自家用車に乗り、難なくマドリードへの夜行バスが出ているバスステーションに着いた。タクシーよりも安くて早い。おまけにドライバーも客もクレカ登録が必要でお互いに利用前に評価を確認することができ安心した。

 

夜までかなりの時間があったので、ポルトガル屈指の観光地シントラ地区へ行くことにした。城を巡って時間を潰すことにしたのだ。

さっそく電車に乗ってシントラへ向かう。

その途中で驚いたことがあった。電車の中で大型犬を連れて歩いていた10代後半の美少女が僕のところにきて、

「食べ物がありません。この子のためにコインを恵んでください。」

と言ってきたのだけど、旅中こういったことは多く、また寛いでいるときにいちいち相手にするわけにもいかず咄嗟に断るくせがついてしまっていた。

「No」

と躊躇なく彼女の顔を見たときだった。

美しい白肌の顎から薄茶色の5mmほどもある髭が何本も生えていたのだ。

もっと驚いたことには彼女が立ち去ったあと、それを妻に話したのだけど「ふーん、そうなんだ」といった調子だったことだ。

何故驚かない?

思わず僕は「顎髭」「女」でググった。すると、出てくる出てくる女子の悩み。口髭なら分かるが、顎髭。画像もたくさん出てきた。

そんなかんじで初めて女性の顎髭を見てしまった僕はしばらく混乱していた。

先の少女は若いだけでなく美しく、隣には犬までいたことを思い出すと、なんだか胸が締め付けられる想いだった。

城巡りは実に充実していた。

が、ユーラシア大陸の最西端にあるロカ岬で夕日を見ずして、ヨーロッパを出るわけにはいかない。

城廻りを楽しんでいるうちに時間はあっという間に潰れていて、日暮れの時間に近づいていたのだ。

バスに飛び乗ると、乗っている人たちの多さを知り、安心した。

 

バスを降りると、そこは想像以上の人たちで溢れていた。岬の果てに向かって皆ぞろぞろと歩いて行く。

しばらくすると、水平線が見え、最果てにあるらしい大きな十字架が見えてきた。そして、その横では大海原と大空を与えられた太陽が思い思いに燃えていた。

「わー!」

声をあげた妻の方を見ると、オレンジ色の光を浴びた人形のように固まっていた。

ユーラシア最西端、ロカ岬

 

夕日が北米大陸へ沈んでいくのを眺めて、あと2ケ月でアフリカ、南米、北米の3大陸すべてを踏むのは時間的にも金銭的にも厳しい気がしていた。

でも、考えるだけ無駄だった。それが時間と金を使うだけだということをこれまでの4カ月で思い知ったからだ。

さあ、とりあえず、アフリカだ。行こう。